キーシンの本
こんな本が出版されたというので、読んでみました。
注!読まれていない方へ・・・内容含みます!
内容は、小さい頃からどんな風にピアノと向き合ってきたのか、そして、この才能を生かすために、周りの大人たち、音楽の専門家たちがどれだけ慎重にキーシンを守りながら育ててきたのかが、わかるものでした。
これだけの才能を持っている人は、まわりがほっとかない。
キーシンの才能や努力は素晴らしいものだけど、周りの人の尽力無くしてキーシンはいなかったと思うと、特に、家族や先生の人生をも変えてしまうほどで、やはり環境は大きいものだと思います。
また、想像はできても、私のような純粋な日本人には、なかなか分かり得ないもの。
それが、キーシンはソ連出身で、ルーツをたどればユダヤ人で、世界的な演奏活動ができないソ連時代を抜け出すために、たくさんの音楽家に手助けを受けて、アメリカに移住したり、ヨーロッパに籍をとったり、そしてルーツであるイスラエルの籍にあることに落ち着きを感じたり・・・。かといって、自分が育った故郷ロシアに特別な思いもある。
常に、自分のある場所がどこなのか??を問いかけながらここまで歩んできたと知ることができました。
ソ連出身のかつての音楽家たちにも、伝記を読むと国との関係が絡んできます。
ああ、複雑なのですね。
いつの時代も音楽家は、国や世界の情勢、戦争などに巻き込まれ影響を受けながらも創作活動や演奏活動を受け継いできてくれました。
面白かったのは、キーシンが今まで出会ってきた音楽家のエピソードや、曲とどんな風に向き合ってきたのかなどなど。
10代の頃、カラヤンとジルベスターで共演したチャイコフスキーのピアノ協奏曲。
今聴くと、すごくテンポが遅いのですが、カラヤンはリハではもっと遅くて本番でこのテンポまで持っていくのはいろいろあった事とか
これですね↑ 私はこのテンポ好きなんですけど・・。
テンポは時代の流行りもあるらしいです。
それと、好きな作曲家を5人上げていて、その中のバッハは別格だ、と答えているのだけれど、演奏会のプログラムにバッハはほとんど入っていないのです。
そのことについて、理由が聞きたかったけど、何も書かれていませんでした・・。
キーシンさん、私はバッハが聴きたいです。編曲ではなく・・。
でも、本人も書いているけれど、やはりロマン派の音楽、とくにショパンは、他の作曲家を凌駕して身近に感じるひとりの作曲家と思っているそうです。
そして、ベートヴェンもショパンと同じくらい身近だったが、ショパンと同じように我がものにするにはかなりの時間を要する。だから、音楽への愛情と、それを弾きこなせる技術は同一視できないし、比例しない。
とも言っています。
私も、ロマン派の曲が一番、キーシンらしさを感じることができ、ベートーヴェンの曲には、苦悩が垣間見える時があると感じていたので、本人の感じていることに合致していたのはびっくりしました。
他にも、若い頃は、格好つけて激しい弾き方をしていて、そんな時も先生が忍耐強く意見し続けてくれて、落ち着いてきたこと。
曲を勉強していると、音楽に詩が浮かび上がってきて、ブラームスやシューベルトの楽譜の音符の上に言葉を書きこんでいたり・・。
なんだか、やっぱりすごいですね、天才だけど努力の人。
そして、何よりもまわりのひとが「音楽家キーシン」を大事に育てようとする愛情と同時にマイナスなことから守る気持ちがひしひしと感じます。
キーシンの場合は特別ですね。
だって、一生を通して先生が1人、なんて普通じゃ考えられません。
本人、先生、環境・・相乗効果の賜物、という感じです。
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