手指の形・動きマスターまでの道のり 

 ピアノを習う上で避けて通れないことのひとつに、この手の形、指の動き、さらには腕の使い方や脱力の習得があります。


  しかし、幼児子供の場合、大きくて重いピアノの鍵盤を操るのは容易なことではありません。大人の男の人でも同じ楽器を使うのですから。

 だからといって、どんな弾き方でもいいから音が出ればいい、わけではありませんね。

 その理由は以前にも「ピアノの体」で書いています。


 レッスンでは付き添われる親御さんにも、時々お伝えしているのですが、あまり時間もなくゆっくりお話できないので、私の息子の時の経験なども交えて、ここで少し補足できればと思います。

 

 

 小さなお子さんでも、私は、最初から手指の形や腕の使い方について説明しています。

 手の動きにも意識が向くよう簡単な楽譜を使ったり、時には、道具を使ったり、鍵盤から離れて指を動かしてみたり、遊んでみたりしながら、こういう感覚なのかな?と感じてもらうためにやってもらうのですが、特に幼児ですと劇的に即出来ることは少ないです。

 でも、やろうと努力をしてくれます。その意識が大事だと思っています。

 そして、出来ないからと言って私は怒りません。(当たり前だけど...)

 何度でも何度でも根気よく伝えますよ。

 また、すべて完璧にならなくても、焦点を見てそこができれば合格として次に進みます。

 一緒にやって出来たのに、次の週になったら、また元に戻ってしまうのもめずらしいことではありませんし、曲が変わればまた元に戻ってしまうことも多いです。

 これは発達の差や、意識の仕方にも関係してきます。

 


 指の弱さに加えて、一番最初にピアノに触れた時から手指の形に意識を向けないまま弾き続けてしまうと、直すことは時間を要します。子供によっては年単位の時間が必要です。

 意識をして練習し、成長とともに自然に改善してくる子もいれば、大きくなってもなかなか直りにくい子もいることは事実です。

 

 この手指の動きに関しては、こういった現実を踏まえた上で私からお願いがあります。


 私もこんな気持ちですので、お子さんには、すぐには出来なくても意識していこうね、という優しい姿勢でいてください。


 私は毎レッスン中何度か言うと思います。あまりにも毎回私が指のことを言ったとしても、お母さん自身が焦ることはありません。

 何度も言われているのに、出来ない...などとマイナスに思うこともありません。

 意識をしてやり続けること、指をたくさん動かすことが大事です。

 おうちでの練習中も出来ないことを言わずに、ちょっと手を見て、出来てた時に喜んであげてください。

 または、できていなくても意識していたら褒めてあげてください。

 私には、何よりもこの繰り返しが一番効果があるように感じます。1回のレッスンよりおうちの練習の方が長いですし、一番褒めてもらいたいのは親御さんですからね。

 長~~~~い目で見ていきましょう。

 そして、お子さん本人にも、私が毎回何度か言うと思うけど、その都度意識して直してみようのスタンスからでOKです。私も一緒にがんばっていますので、1人ではないですよ。

 

 ここまでいうと、ピアノって大変だなぁって思います?

 そうです! ピアノを習っている子たちは、すごいことしてるんです! 

 ただ、これだけ時間をかけて習得するものですから、それはきっと宝物になるはずです。


 

 

 私の息子も幼稚園からピアノを始めたのですが、小さい頃から私に何かを言われるのがすごく嫌なタイプでしたので、私が教えてあげられず、他の先生にお願いしていました。

 習い始めの頃、自宅で練習を見てあげるとき、どうしてもすぐに口が出てしまい、息子は明らかにピアノを弾く気がそがれているようでした。

 ましてや、手の形、音符を読むことを、毎回先生に言われて子供自身が一番自覚しているのに、家でも言われるのですから、それもわかりますが、自分の息子だとどうしても言ってしまうのです。

しかも、音間違えやリズムの違いなどのミスや手の形(要するにマイナスなことばかり)について。

 次第に、自宅での練習の時の雰囲気が悪くなってきたのを感じ、

 このままじゃピアノを続けることが出来なくなるかもしれない、と接し方を変えました。

 私が望んでいたのは、厳しい練習を積んで、音楽の道に進んでほしいとか、コンクールに出て上位になってほしいとか、そんなことではなく、大人になった時や、おじいちゃんになっても時々ピアノを弾いて楽しんでほしい、1つの趣味として音楽の演奏が、きっと大人になった時に役にたつかもしれない、ということだけでした。

 「だけ...」なんだけど、大人になっても...というのは、最低限の基礎定着が必須です。基礎定着は最低でも小学校の6年間は要すると思っていたので、この間はどうしてもピアノを続けて欲しかった。

 私自身も家でピアノを弾いていたり、時々一緒に連弾をしたりということはありましたが、技術に関することはほとんど先生にお任せし、家では練習の時、「〇〇のピアノの音は好きだな~」とか、

「今の曲、いいね。もう一回聴かせて」とか「むずかしそうだね~、その曲」とか(いいところを見つけて)「腕の力抜けてていい音出てる」とか寄り添うような声かけを心がけました。

 言いたくなる気持ちをグッとこらえて。

 それでも、練習をしない時は、「練習しろ~」って言いまくりましたけどね。

 

 本当に、お母さんとお子さんの関係は、計りの針がゼロの右と左にフラフラ揺れるように、微妙なバランスが大事ですね。

 もちろん、いろんな性格の子がいますので、これが正解というものではないのでしょうが、長く続けていくピアノは、送り迎えやおうちでのピアノ(鍵盤)購入の他、言葉がけなど小さなことかもしれないけれど積もり積もって、親御さんのご協力が大きいです。

 いつもありがとうございます。


 私がレッスンでお伝えしていることは、みんな意図がありますので、「どうしてこんなことやってるんだろう。。」と疑問に思った時は、気軽に聞いてください。

 親御さんとなんでもお話できることが、お子さんの安心にもつながり、レッスンも楽しくなると思います。

 どうぞよろしくお願い致します。